同じ弦楽器であるベースとギター。共通点が多い両者ですが、何故ベースは指弾きする人が多く、ギターは指弾きする人が少ないのでしょうか?この謎を解き明かすことによって、まだ見ぬ指弾きの可能性が見えてくるかもしれません!
今回の謎について、鍵となりそうな3つのポイントが思い当たりました。
以降、つらつらと書いていくのですが、私は少しかじる程度しかバンドでベースを担当したことがありません・・。
なので、ベースに関してトンチンカンなことを書いていても、そこは笑って許して頂けると幸いです!
担当する音域の違い
1つ目のポイントは、ベースとギターでは「担当する音域が違う」ということです。
ベースは、低音域でアンサンブルを支える楽器です。
ヴォーカルやメロディー楽器とは違い、ベース自体が主役になることは多くありません。
そんなベースを、指ではなくピックで弾くとどうなるでしょうか?
ピックで弾くと硬質なアタックが出ますし、全体的に高音域が強くなります。
これは同じポジションで同じ音を弾いても、指よりピックの方が高音域側の倍音成分が多く含まれる、というイメージです。
低音を担当するベースで高音域の成分を多く出してしまうと、他の楽器の音と被る可能性が出てきますね!
結果、全体的にごちゃごちゃとした、下手すれば楽器同士がケンカしているようなサウンドになってしまいます。
そういったことを回避するために、ベースは指で弾いて甘いマイルドなトーンにしているのではないでしょうか?
ある程度は機材のセッティングで何とかできそうですが、弦をはじくという本質的な部分の特徴までを、完全に変えてしまうのは難しいと思います。
出来たとしても、極端なセッティングになりそうですし・・。
ただ、ピック弾きにも長所がないわけではありません!
アタックが強いということは、指弾きよりも勢いを演出できるということです。
高音域が多くて他の楽器と被るということは、全体で一体感のあるサウンドになるということです。
ロック等のジャンルで比較的ベースのピック弾きが多いのは、この辺の長所をうまく活かせる音楽だからではないでしょうか。
逆にギターに関しては、ベースの反対を行った方が、音域的に丁度良くなりそうです。
例えば、歯切れの良いカッティングやキラキラしたアルペジオが欲しいのに、モコモコした音の指弾きで演奏されても困ってしまいます。。
聴かせ所のギターソロでは尚更ですね!
ギターで指弾きをする人は、ベースのように指先の肉ではなく、爪を使っていることが多いです。
これは、爪を使うことによってピックと同じようなクリアな音色にしている、とも取れますね。
逆に、ギターでベースのような音色を出したければ、(爪を使わない)指弾きをすれば良いということに・・うーん、意外と奥が深い!
物理的な問題
2つ目のポイントは、「物理的な問題」です。
当然ですが、ベースはギターよりも太い弦が張られています。
その太い弦を、しっかり鳴らすにはどうすれば良いでしょうか?
方法の1つとして、単純に弦をはじくのではなく、ギターで言うアポヤンド奏法のような弾き方が挙げられます。
アポヤンドは、弾いた後の指が隣の弦にもたれかかるように弾く奏法ですね。
特に、ウッドベース(アップライトベース)のような生ベースを弾くことを考えると、アポヤンド的な弾き方でしっかりした音が出せることをイメージできると思います。
「ちょっと待った、ピックでもアポヤンド奏法はできるぞ!」と言われそうですが・・それだと別の問題が出てきます。
ピックでアポヤンド奏法をすると、連続して同じ弦を弾くのがかなり大変にならないでしょうか?
なんせ、弾いた後のピックが隣の弦にもたれかかっているので・・また同じ弦を素早く弾こうにも、物理的に距離が離れてしまっていて出来ません。
その点指弾きだと、弾いた指と違う指で同じ弦を弾くことができますね。
最低2本の指を使えば、ギターのオルタネイトピッキングのように素早く同じ弦を弾き続けられます。
アポヤンドで同じ弦を素早く弾くために指弾きをする・・これはあまり語られることはありませんが、結構重要なポイントではないでしょうか!(ベースの教本ですぐに説明されているようなことならすみません・・)
素早く弾けるという点では、指弾きからだとスラップ奏法に移行しやすいメリットもありますね。
一方ギターは、ベースよりも弦が細く鳴らしやすいので、常にアポヤンドで弾く必要はありません。
クラシックギターでは、基本はアルアイレ(弾いた指が弦から離れる奏法)で、アポヤンドは状況に応じて入れていく感じが多いと思います。
エレキギターだと弾き方が強くなりすぎることもあり、アポヤンドはほとんどやらないイメージです。
ちなみに、ベースをギターのように指の爪で弾く人が(私の知る限り)いないのも、物理的な問題が関係してそうですね。
ベースの太い弦を生身の爪で弾くと、爪がどうしても負けてしまうので、なかなか良い音が出なさそうです。
まあ弾けたとしても、前述の音域の問題に引っ掛かるので微妙かもしれませんが・・ソロギターならぬソロベースのようなことをするのであれば、爪弾きはありな気もします。
でも爪を伸ばしたら、普段の指弾きの時に邪魔になりますね・・難しい!
スタープレイヤーの影響
3つ目のポイントは、「スタープレイヤーの影響」です。
指弾きに限らず、革新的な弾き方をするプレイヤーが表れると、それを取り入れようとするフォロワーがたくさん現れるのはご承知の通りです。
著名なベーシストはほとんど指弾きなので、その後を追う人も自然と指弾きをする流れになるのではないでしょうか。
ピック弾きでパッと思い浮かぶのは、私はポール・マッカートニーくらいです・・。
逆にギターでは、著名な指弾きのプレイヤーは数えるほどしかいません。
もちろん、クラシックギターやソロギターの世界では全員指弾きですし、他のジャンルでも素晴らしい指弾きのプレイヤーはたくさんいますが・・今回はギターを弾かない人でも知っているような有名人に絞っているということでご容赦ください!
思い浮かぶのは、ジェフ・ベック、マーク・ノップラー(ダイアーストレーツ)、アルバート・キングくらいでしょうか・・。
3人とも、良い意味でかなりクセが強いギタープレイヤーですね!
こんな状況なので、ギターで指弾きが少数派なのも納得です。
ギターを弾かない人にエアギターをやってもらうと、ほぼ100%がピック弾きになるかもしれません笑
やはり、スタープレイヤーの有無というのは大きく効いてそうです!
おわりに
ここまでで触れていない指弾きのメリットとして、複数の弦を同時に、または素早く弾けることが挙げられます。
前者の「複数の弦を同時に弾く」は、ソロギターでメロディーとベースを同時に弾く等で、後者の「複数の弦を素早く弾く」はフォークの3フィンガーやカントリーの高速リック等で活かされてますね。
ベースはこういった弾き方をあまりしないのに、指弾きが多数派なのは興味深い所です(やったとしても弦の本数がギターより少ないのでバリエーションが少なくなりそうですし)。
これは、今回のブログで書いた3つのポイント「担当する音域の違い」「物理的な問題」「スタープレイヤーの影響」がかなり効いていることの証明ではないでしょうか?
他にも、私の気付いていないポイントがまだあると思うので、ベーシストの方にお会いできたら、その辺りを伺ってみようと思います。
せっかく同じ弦楽器で同じ指弾きをしているので、何かしら良い影響を与え合えるのではないか?と密かに考えているのですが・・。
指弾きをしている時間は圧倒的にベーシストの方が多いので、教わることの方が多いかもしれません!
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