学校のテストの点数や仕事の営業成績など、数字で良し悪しを判断されることは多いです。ギターでも同様に数字が判断材料となっていることがありますが、勉強や仕事に比べて固執する必要はないように感じます。むしろ数字へのこだわりは、長くギターを楽しむ機会を阻害しているかもしれません・・。
ギター歴
これから、ギターに関する数字をいくつか考えていこうと思います。
まず最初は、もっとも意味のなさそうな「ギター歴」についてです。
ギター歴の定義は人によってまちまちで、単純にギターを初めて弾いてから現在までの期間だとする人もいれば、間にブランクがあったらそれを差し引いて算出する人もいます。
それだけでも誤差は大きくなりますが、さらにギター歴は期間だけの話で、密度が全然分かりません。
毎日何時間も弾いている人と、週に何日か触るだけに人でも、同じギター歴になる可能性がありますね。
実際に、ギターを始めて1年で人の心を揺さぶる演奏をする人もいれば、ギター歴が数10年でも全然弾けない人もいます。
しかし、前者のギター歴1年の人が調子に乗る必要もないですし、後者のギター歴が数10年の人が卑屈になる必要もないと思います。
ギター歴を知ってしまうと、逆に変なバイアスが入ってしまうので、知らないのが吉かもしれません。。
ギター歴は昔はよく耳にしましたが、最近ではほとんど話題に挙がらない気がします。
例えば、昔はバンドのメンバー募集で、当方ギター歴何年・・みたいな記載をよく見かけました。
今考えると、限られた紙面で楽器の習熟具合を表すのには、有用な数値だったかもしれません。
しかし、今や誰でも実際の演奏を録画・録音できますし、それを伝達するのも容易なので、役割を終えた感じでしょうか。。
一方で単純に積み重なりやすいもの、例えばギター関連の機材とか音楽に関する知識量の目安には、ギター歴はまだ使えるかもしれません。
完全に無意味な数値ではありませんが、ほとんど気にする必要はないと言えそうです。
練習時間
ギターの習熟度を計るのにもっとも良く使われている指標が、練習時間です。。
特に断りがない場合、1日あたりどれくらいの時間練習しているか?を意味していることが多いですね。
この練習時間も、そこまで気にしなくて良いのではないかと思います。
まず、毎日ぴったり同じ時間だけ練習するという人はまれで、普通はバラつきがあるはずです。
時にはまったくギターを触らない日もあるでしょう。
そんな中で、スカラ値(1つの数値)の練習時間をどうやって決めるんでしょうか?
人によっては、1週間で1番長く練習した日の練習時間のことをいうかもしれません。
この場合は、かなり多い方に水増しされているので、役に立つ数値とは言えませんね。
1週間の平均練習時間とかならまだ役に立ちそうですが、これもきっちり計算している人なんていないと思いますし、する必要もなさそうです。
そもそもギターを練習している時も、ずっと弾いている訳ではありません。
音色を作ったり、曲をコピーしたり、フレーズを考えたりといった、弾いている以外の時間も含まれてるはずです。
45分は弾いていて15分思案しているのと、逆に15分弾いていて45分思案しているのは、同じ1時間の練習時間でしょうか?
その時間配分で良い練習といえるかどうかは、状況によって変わってくると思います。
もっと言うと、練習時間以外のふとした時に、音楽やギターのことを考えるのも、広義の練習と言えなくありません。。
さらに、自宅で何時間も練習するよりも、人前で数分弾く方がよほど練習になるという事実もあります。
練習の目的の1つは、本番で良い演奏ができるようにすることなので、本番での成功体験(もしくは失敗体験)は貴重なフィードバックになり、次に活かすことができます。
しかし、逆に人前で演奏することばかりになってしまうと、他のことが進まなくなってしまいます。
結局は、数値の大小では比較できないという所に、戻ってくる形になりそうですね。。
そういえば、「練習時間」と1つ前に考えた数字「ギター歴」とを掛けると、累計の練習時間になりますね。
どちらもブレのある数字なので、この累計の練習時間も値自体を評価するのは微妙な気はしますが・・累計の練習時間を積み重ねていく感覚を持つのは良いかもしれません。
たとえ忙しくて1日の練習時間が少ししか取れない人でも、何年も何年も続けたら、累積の練習時間はどんどん増えていきます。
ケガや病気などで弾けない日があっても、累計の練習時間は減ることがないので、増えた減ったと一喜一憂することもありません。
気付いたら、ジミヘンが生涯にギターを弾いていた時間の合計を越えているなんてことも、普通に起こり得そうです。
ジミヘンのようにプレイできるかは別問題ですが、夢のある話ではないでしょうか!?
テンポ
ギターの上達度と数字が、比例しているように感じやすいのが「テンポ」です。
80BPMとか120BPMとか、BPM(1分間の拍数)で表されるやつですね。
メトロノームで一定のBPMのテンポを刻んで、基礎練習や曲の練習をしている人も多いと思います。
それ自体は効果的な練習方法だと思いますが、問題はテンポを上げることに意識がいってしまうことです。
最初は遅いテンポから練習というのが定石ですが、弾けるようになってくるとテンポを上げていくことになります。
BPMが上がっていく訳ですが、最初のうちは数値が単調に増えていくので、目に見えて上達しているように感じます。
ところがある程度までいくと頭打ちになって、根本的な弾き方や運指などの改良が必要な場面に直面することもあります。
ここで一度、テンポを落とすべきですが、数字が減ると上達度が下がっているような気がして、上がったままのテンポで弾き続けてしまうことが多いです。
BPMの数字は一度下がりますが、これはまた上がるのに必要なステップなので、決して後退しているわけではありません。
しかし不思議なもので、一度上がった数字を下げるのは強い意志の力が必要になってきます・・。
そもそも、テンポを上げて無理に速く弾く必要がないこともあります。
既存の曲を練習しているなら、その曲のテンポ+α(走ってしまった時のバッファ)まで上げたい所ですが、基礎練習だとその基準がありません。
上達している気がするので基礎練習のテンポをどんどん上げる
⇒頭打ちになるが弾き方を変えたりテンポを下げることはしない
⇒その練習が嫌になってくる
こんな感じの悪循環が起こりがちなので、気を付けましょう!(私もハマったことがあります・・)
レパートリーやフレーズの数
セッションに参加する人や、ソロギターをやっている人などは、レパートリーの数を増やしたいという気持ちがあるはずです。
色んな曲を、リクエストを受けた時に即座に弾けたら、盛り上がりますよね・・。
しかし、レパートリーを増やすのが100%正義でもないと思います。
何となくこなせる曲が100曲あるのと、完全に自分のものにした曲が10曲があるのとでどちらが良いかは、状況によらないでしょうか?
曲よりも少し短い単位になりますが、フレーズの数についても、同じことが言えそうです。
ソロを構築するのに、覚えているフレーズが多い方が有利な気がしますが、ともすれば覚えたフレーズを羅列するソロを作りがちになります。
気に入った数個のフレーズを変化をさせたり使い込んだりする方が、音楽的なことができる場合も多いです。
さいごに
数字は言葉や文章と違って誰が見ても大小が同じなので、分かりやすさはこの上ありません。
しかし、数字にこだわってギターを弾くのが嫌になってしまったら、元も子もありません。
競技だとタイムや得点が優劣に繋がりますが、ギターは競技ではないですもんね。
今や競技の世界でも、勝利至上主義ではない流れになってたりしますし・・。
一方で、客観的で正確な数字は、何かを計るものさしとして利用できそうです。
例えば、普段は120BPMで弾けているフレーズを、同じテンポで弾けない日は、演奏フォームが崩れているとか、単純に疲れているとか、判断ができます。
ソロギターのレパートリーが5曲になったら、オープンマイクに参加してみようといった、目標値とすることも可能ですね。
ギターが嫌になる大きな原因の一つが、上達を感じられない時だと思います。
上達度は数字で計れそうですが、数字だけでは判断材料として不足していることも多いです。
上達していないと感じた時は、良い意味で数字に鈍感になる必要があるのではないでしょうか・・。
以上、日頃から数字に追いかけられている現代のギタリストの気持ちが、少しでも楽になればと思って綴ったブログでした!
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