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理想的な演奏フォームを3つの角度から考える

ギターを弾く時の構え方について、イスや足台の高さ、ストラップの長さなど、長さに関するものは分かりやすく、こだわりがある人も多いと思います。一方で角度についても様々考えられますが、個々に言及されることは多いものの、全体を総括した記述は見たことがありません。今回は3つの角度から、理想的な演奏フォームを探ってみたいと思います。

回転軸の定義

 

角度を考えるといっても、どこを中心に回転するのか基準を決めなければなりません。

 

そこで、工学などの分野でよく出てくる、直交座標系を使いたいと思います。

図の出典「一自由度系の振動」(https://www.fit.ac.jp/~senba/OneDof/ONEDOF/OneDOF/DOF.html)

x軸、y軸、z軸が互いに直交している座標系ですね。

 

図中央の直方体の部分に、クルンと回転している矢印が3つありますが、これが今回扱う3つの角度の回転方向です。

 

 

 

この座標系と、ギターを弾く人を重ね合わせるとこうなります。

 

体の前後方向がx軸、横方向がy軸、高さ方向がz軸となりました。

 

ここから、座標系と人は固定で、ギターをそれぞれの軸を中心に回転させて位置(演奏フォーム)を決めます。

 

全部で3つの回転角度を考えると、様々な演奏フォームを網羅的に検討できそうな気がしないでしょうか!?

 

 

 

なお、図ではこれらの回転方向にω(オメガ)などのギリシャ文字が割り当てられていますが、あまり馴染みがありません。。

 

そこで今回は、愚直に「X軸まわり」「Y軸まわり」「Z軸まわり」と呼ぶことにします。

 

車が好きな方は、ロール・ピッチ・ヨーと置き換えて頂くと、分かりやすいかもしれません。

 

なお便宜上、図の矢印の方向(右ねじの法則の方向)がプラスの角度とします。

 

 

 

では、それぞれの角度について、順番に考えていきましょう。

X軸まわり

 

まずはX軸まわりです。

 

こちらに関しては、座って弾く時と立って弾く時で理想的な角度が変わってきます。

 

まず、座った時を考えてみることにします。

 

 

 

座って弾くジャンルの代表、クラシックギターの理想的なフォームは、水平から45度くらいになっています。

 

すべてのポジションで弾きやすく、右手の自由度も高い、洗練されたフォームですね。

 

(アンドレス・セゴビア)

 

一方、同じナイロン弦でも、フラメンコギターではほとんど角度がついていません。

 

(パコ・デ・ルシア)

 

これはクラシックギターと違い、ギターのボディを右足にのせるためですね。

 

話の流れから、フラメンコギターになりましたが、アコースティックギターで弾き語りをしたり、ソロギターを演奏する時なども、右足でギターを支える場合は、同じようにあまり角度がつかないかと思います。

 

 

 

これら座った時のX軸まわりの角度は、自然と弾きやすい所におさまるようです。

 

試しに、右足にギターをのせた状態で角度をどんどん上げていってみて下さい。

 

左手は窮屈に、右手は弾きづらくなり、誰がやっても良いフォームでないことは明白です。

 

 

 

逆に、ギターを右足にのせた時に、角度が水平から少しマイナス側にいってしまう人がたまにいます。

 

パフォーマンスの動きの中でそうなるならOKですが、常にマイナス側に傾いているなら姿勢も悪くなりますし、避けたい所です。

 

これは鏡を見たり、動画を撮って確認すれば、改善はそれほど難しくないと思います。

 

 

 

次に、ストラップをつけて立って弾く時を考えてみます。

 

立って弾く時は、座って弾く時と違ってフォームが固定されず、ある程度自由に角度を変えることができます。

 

X軸まわりにどのくらいの角度が良いかは、ギターの高さ方向の位置(ストラップの長さ)によって変わってきます。

 

 

 

ギターを低い位置で構えると、角度が大きくなる方向になります。

 

(スラッシュ)

 

こちらは極端な例として、低い位置で構える上に、かなり角度をつけて弾いている印象のスラッシュの画像を探してきたのですが・・思ったよりも普通でした。

 

ざっくりプラス30度くらいでしょうか。

 

スラッシュはソロのクライマックスなど、印象的なシーンでギターを地面と垂直くらいにして弾くので、そのイメージが焼き付いているのかもしれません。

 

 

 

逆に、ギターを高い位置で構えているイメージの強い、ジョン・レノンの画像がこちらです。

 

(ジョン・レノン)

 

ざっくりプラス15度くらいでしょうか。

 

ほぼ0度(水平)のイメージがありましたが、こちらは意外と角度がついてました。

 

しかし、ギターの位置が高いと角度が小さく、ギターの位置が低いと角度が大きい方が、理想的なフォームになるということは言えそうです。

Y軸まわり

 

Y軸まわりでまず注意なのが、指板が見えるようにギターを回転させていないかということです。

 

そうすることで、左手の状態が確認しやすくなる半面、押弦しづらくなって自分の首を絞めてしまうことになります。

 

これは、特にギターを始めて日が浅い頃にやってしまいがちです。

 

 

 

座って弾く時も立って弾く時も、自分の視点からは指板がほぼ見えず、ネックの横のポジションマークが見えるくらいが理想的な角度だと思います。

 

図でいうと、わずかにマイナス方向に角度がついた状態ですね。

 

 

 

とは言え、複雑なフォームのコードを押える時や、人工ハーモニクスやタッピングで右手の位置も確認したい時は、指板を見たくなるものです・・。

 

そんな時は、ギターの角度はそのままに保って、自分自身が指板を覗き込むようにします。

 

見た目はあまり良くないかもしれませんが、演奏フォームが大きく崩れるのを防ぎつつ、ポジションの確認ができるようになります。

 

 

 

Y軸まわりに関しては、ここまでマイナス方向の話ばかりが出てきましたが、プラス方向に回転させる事例もあります。

 

それは、先ほどに引き続き登場の・・フラメンコギターです!

 

写真は沖仁さんですが、ギターがY軸まわりのプラス方向に回転したフォームになっています。

 

おそらく、指板がまったく見えない状態なのではないでしょうか。。

 

沖仁さんに限らず、フラメンコギター奏者が力を込めて弾くようなタイミングで、このような角度になっていることが多いと思うのですが・・フラメンコギターには明るくないので間違っていたらすみません。

Z軸まわり

 

順番的に最後になりましたが、このZ軸まわりが一番見落としがちながら、重要な角度になります。

 

というのも、ギターを弾く時はこの角度をゼロ度にすると勘違いされることがよくあるからです。

 

両腕をまっすぐ横に伸ばした方向と、ギターがまったく同じ方向を向いている(ゼロ度)という状態ですね。

 

 

 

しかし、実際はプラス45度くらいの角度がある方が、自然に構えられて弾きやすいフォームです。

 

ゼロ度だと、ローポジションだけを弾くならまだ何とかなるかもしれませんが、少しポジションが上がるとかなり弾きづらくなります。

 

さらにハイポジションになると、左手が体と干渉してしまい、物理的に弾けないですね。。

 

さらに、ゼロ度の時は右腕も不自然にギターに引っ張られるような状態になるので、ピッキングの面から見ても良くありません。

 

 

 

ただし、これらは座って弾く時に右足にギターをのせている場合や、立って弾く時に体の中心よりも右側でピッキングする場合です。

 

クラシックギターのように左足にギターをのせるフォームでは、Z軸まわりの角度は小さくなります。

 

立って弾く時も、体の中心に右手が来るようなフォームであれば、同様にZ軸まわりの角度は小さい方が自然な体勢になります。

 

このように、Z軸まわりの角度は右手の位置と関係するので、そのあたりを意識して自分にあった演奏フォームを探すと良いと思います。

角度を決める順番

 

そういえば、並行移動するときと違って、回転させるときは順番で結果が異なりますね。

 

例えば、X軸方向に1cm→Y方向に2cm→Z方向に3cmと平行移動させる時は、順番を変えても最終的な位置は同じです。

 

しかし、X軸まわりに10度→Y軸まわりに20度→Z軸回りに30度と回転移動させる時は、順番を変えると結果も変わってきます。

 

 

 

今回は別にCGデータを移動させるプログラムを作るとか、厳密な移動を考えているわけではないので、順番はそんなに気にしなくても良いと思いますが・・角度を決める優先順位を決めておくのは悪くないかもしれません。

 

ちょっと考えてみましたが・・

 

① Y軸まわり

② Z軸まわり

③ X軸まわり

 

の順番が良いのではないかと思いました。

 

 

 

Y軸回りがトップなのは、ほとんどの場合で、わずかにマイナスの角度にする一択だからです。

 

指板を見ようと、マイナスの角度を大きくしすぎると逆に弾けなくなるので、要注意!

 

適切な角度を保ちましょう。

 

 

 

②Z軸まわりは、左右どちらの足にギターをのせて弾くか、または立って弾く時に、右手の位置をどこにするかで角度が変わってきます。

 

弾きやすく、自然に構えられる角度をあらかじめ把握しておくと良さそうです。

 

 

 

③X軸まわりの優先順位が一番低いのは、プレイ中にあえて角度を変化させることがあるためです。

 

例えば、ハイポジションを使う時だけ弾きやすいように角度を下げたり、パフォーマンスのために一時的に角度を大きく上げたりといったことが考えられます。

 

X軸まわりの角度はきっちり決めずに、ある程度可変にしておくのが柔軟なプレイに繋がりそうです。

 

 

 

以上、3つの角度から、理想的な演奏フォームを考えてきました。

 

長くギターを弾いてきた人でも、演奏フォームが知らない間に崩れてしまっていることがあります。

 

前まで弾けていたフレーズが、急に弾けなくなった・・みたいな調子の悪い時は、演奏フォームを見直してみると良いかもしれません。

 

角度は誰が計っても同じ客観的な指標なので、何かあった時でも冷静に対処できるのではないでしょうか。

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