· 

「トリ」はつらいよ

何組かの演者が順番に出演するブッキングライブで、たまに最後の出番(トリ)を任されることがあります。うれしい反面、この「トリ」は務めるのが大変な役回りでもあります・・。今回は少し裏話的に、自分がトリの時に感じた難しさをまとめてみたいと思います。

出演順について

 

そもそもブッキングライブの出演順は、自分で企画したものでない限り、ライブハウスの店長やブッキング担当の方が決めています。

 

機材のセッティングに時間が掛かるので1番手にしてほしいとか、どうしても開演時間に間に合わないので2番手以降にしてほしいなど、演者の方から希望を伝えることもありますが、基本的にはお店の人にお任せするのが普通だと思います。

 

 

 

お店側は集まった演者に対して、ライブの流れや全体のバランスが良くなるように、熟考して出演順を決めます。

 

詳細が明言されることは少ないですが、出演順は意味があるということですね。

 

 

 

与えられた出演順によって、演者の役割はそれぞれ違ってきます。

 

例えば一番手だと、音楽活動を始めて間もなかったり、その会場に初めて出演する演者が、自分達のパフォーマンスを披露しつつ、会場の空気を暖めるような役割を、与えられていることが多いのではないでしょうか。

 

まあ、お店側の考え方も様々あるので、あくまで一般的に考えると、という感じですが。。

 

 

 

そんな役割の中でもっとも重要なのが、ラストを務めるトリだと思います。

 

何と言ってもその日の目玉の出演者なので、聴いている人に満足してもらえるようなパフォーマンスをしなければなりません。

 

そのせいか、トリを務めるのは一番手とは逆に、音楽活動が長かったり、演奏のレベルが高かったり、会場全体が盛り上がるステージングができたり、といった演者が選ばれることが多いです。

 

 

 

華々しいイメージのトリですが、一方で隠れた苦労もたくさんあるのではないでしょうか?

 

私は小規模なライブでトリを務めているくらいですが、それだけでも様々な難しさを感じました・・。

 

以降に分類して書いていくので、少しの間お付き合い頂ければと思います。

 

ステージに立たない方には裏話的に楽しんで頂き、同じ立場を経験された方には、共感してもらったり、もっとこうすれば良いのでは?などアドバイスしてもらえるとうれしいです。

シメることの難しさ

 

トリの難しさは、何と言ってもイベント全体をシメないといけないことだと思います。

 

最後まで残ってくれている人達のために、すべてを包み込むようなパフォーマンスをする必要があります。

 

 

 

途中でやらかしてしまった演者がいたり、転換の段取りが悪くてモタついたりしても、トリの働き次第で挽回できます。

 

逆にトリがスベってしまうと、それまでの良い所が全部ひっくり返ってしまうかもしれません。。

 

出番がトリ以外の時は気を抜いてるという訳ではありませんが、トリだとより一層プレッシャーがかかるのは間違いないです。

 

 

 

もちろん演奏で満足してもらうのが第一ですが、MCもトリに見合った内容を盛り込む必要があると思います。

 

まず、他のどの出演順の時よりも、来てくれたこと・聴いてくれたことへの感謝の気持ちを伝えないといけません。

 

後は、その日のライブを軽く総括したりして、最後にもうひと盛り上がりするような空気にすることも重要です。

 

 

 

総括と言うと大げさな感じがしますが、トリは演者の1組に過ぎませんし、別に上からものを言うわけではありません。

 

私の場合は楽曲や歌詞の内容、ジャンル、使用楽器、演奏スタイル等で何か共通点を見つけて、出演者全体が一体感を持てるようなMCをすることが多いです。

 

「今日は全組がギターを使っていて、ギターの魅力が存分に感じられた日でした。」みたいな感じですね・・。

 

もし共通点がなかったら、「今日は全然スタイルの違う方ばかりで、本当にカラフルなライブでした!」のようにお茶を濁します笑

 

他にはメンバー紹介のように順番に、出演者の凄かった部分を挙げていくようなMCをされる方もいたりします(私は言葉の選び方が下手くそなのでやらないようにしています)。

 

音楽が好きな人が集まっている場なので、よほどのことがない限りシメに失敗することはありません。

 

しかし、たまに予測不可能なことも起こります。。

 

私が遭遇したのは、ちょっとしたトラブルで、自分の前に演奏した演者さん同士が険悪な感じになったケースです。

 

妙な緊張感の中でトリとして出ていく時の気持ちは、何とも言えないものでした・・。

 

その日は巻いており時間が余っていたので、自分の出番の後に他の演者の方(トラブルには関係のない人)と簡単なセッションをして、平和的なエンディングを印象付けるというシメを試みました!(もちろん事前に会場の責任者の方に許可を取ってます)

 

結果、何とかうまくまとまった気がしますが、内心はもうビクビクし通しです・・。

時間経過の影響

 

ある程度の時間が経った後の出番になるのも、トリの難しい所です。

 

例えば自分の前に6組の演者がいて、それぞれ30分ずつの持ち時間だとすると、開演から3時間以上してからの出番になります。

 

一番手の演者の時にはMAXだったお客さんの集中力も、確実に低下している状態ですね。

 

目の覚めるようなパフォーマンスをしないと、なかなか印象にも残らないと思います。

 

これは、音楽アルバムの後ろの方の曲をあまり覚えてないのと似てるかもしれません・・。

 

 

 

また、大きな会場で演奏するような大物なら、控え室があるのかもしれませんが、小さな会場では演者も客席からステージを見つつ控えていることがほとんどです。

 

なので、お客さんと同じように徐々に疲れが出てきます。

 

そこからライブをやるテンションに持っていく必要があるので、瞬間湯沸かし器的な切り替えをしないといけません。

 

 

せっかくなので他の演者のステージを楽しんだり、勉強したりしておけば良いのですが、正直なかなかそうもいきません。

 

どうしても自分の演奏内容のことが頭をよぎったり、どんなMCをするか考えたりしてしまいます。

 

出演者全員が同じテーマ(例えば9月のライブでシルバーウィークに何をするか)を話していたら、トリの自分だけそれを無視する訳にはいかなくなったりもします。

 

最後の自分はちょっと気の利いたことを言わないと・・となってしまうので、ちょっとしたこともトリはハードルが少し上がるイメージです。

 

 

 

途中の演者で凄いな~と思う人がいても、焦らずどっしりと構えてないといけません。

 

色々改善の余地がある演者がいても、顔には出さないように気を付けないといけません。

 

様々なことをすべて受け止めた後でステージに上がるトリは、強靭なメンタルも必要だと思います・・。

準備の大変さ

 

トリは本番も大変ですが、準備の方も大変です。

 

例えば、アンコール用の曲を用意しておかないといけないので、1曲多く練習しておかないといけません。

 

ワンマンライブではないのでアンコールがないことも多いですが、いざそうなった時に「もうネタ切れです」とは言えませんよね。。

 

 

 

曲に関してだと、自分が演奏予定の曲を、別の演者が先にやるということもあります。

 

まあアレンジが違うなら、被ったのも笑い話にして同じ曲を演奏できますが・・。

 

ソロギター系のライブでは、アレンジまでまったく同じ(原曲をコピーした)曲で被り、少々気まずい・・なんてこともあるようです。

 

 

 

まれに、お客さんから曲をリクエストされることもあります。

 

もちろん絶対にリクエストを受けないといけないことはありませんが、サラっと少しでも披露できたら、その場が盛り上がりますよね。

 

また、ライブ終了後に時間がある場合は、セッション大会になることもあります。

 

そんな時、幅広いジャンルをこなせたら大活躍できますね。

 

何が言いたいのかというと、様々なことに対応できる音楽的なスキルを養っておいた方が良いということです。

 

 

 

先ほどの「時間経過の影響」の所で強靭なメンタルが必要だと書きましたが、フィジカルもしっかり準備しておかないといけません。

 

ちょっとしたことで体調を崩したり、指が動かなくなってしまっていては、トリの出番でなかなか本領を発揮することができません。

 

「クーラーで体が冷えたので、ちょっとうまく弾けるか分かりませんが。。」なんて言い訳してから演奏するトリなんて嫌ですよね(本当は言い訳したくてたまらないんですが・・)。

 

 

 

以上、トリの難しさについて書いてみました。

 

色々と大変でライブ後はクタクタになるトリですが、うまくいった時の達成感は格別です。

 

今後も任されることがあれば、期待以上の働きができるようにしっかり準備して臨む所存です!

 

 

 

最後に、本文には書きませんでしたが、お酒を飲んだらまともにギターが弾けない私は、トリだと演奏が終わるまでソフトドリンクで我慢する必要があるのも辛い所です。

 

ほろ酔いでテンション高く演奏している人を見ると、毎回うらやましく感じてしまいます。。

 

まあ体のためにはメリハリを付けて飲む方が良いでしょうし、お酒がないとステージに立てない、なんてことになっても困りものですね。

 

今の体質で良かったと思って、また次のライブを頑張ります!

関連記事

ライブで失敗したので原因追究します!


本番で演奏が成功する確率を求める



リハーサルでやるべきことを考える


彼を知り己を知れば百戦あやうからず(チューニング編)