音楽を書き表す必要がある時、まず候補にあがるのが五線譜を使うことです。ギタリストにとってはタブ譜も便利ですが、表せる楽器が限定されてしまう等のデメリットがあるので優先順位は下がりますね。世の中の楽譜は汎用的な五線譜であふれているはず・・と思いきや、特殊な楽譜がたくさんありました!
サビカラ譜
このブログを書くきっかけになったのが、バラエティー番組「鬼連チャン」のサビだけカラオケです。
音程やリズムを外さずに10曲連続で歌いきると、賞金ゲットとなるコーナーなのですが、イメージはこんな感じです。
ほいけんたのインパクトが強すぎてあまり入ってきませんが・・画面の下部分に注目して下さい。
音の高さと長さを表した図形が並んでおり、一種の楽譜と言えそうです。
今どこを歌っているかや、歌うのが難しいポイントまで図示されていますね。
この楽譜(ここでは仮にサビカラ譜と呼びます)を見た時、なぜ五線譜ではないんだろう??と思いました。
五線譜なら原曲のメロディーを聴き取ってそのまま採譜するだけで、確実に正解を表すことができるはずです。
逆にサビカラ譜は、音の高さが1番高い音と低い音で正規化されている(どんな曲でも枠に収まるように共通の基準に整えている)感じがするので、作るのに手間がかかりそうです。
図形は縦方向に1個分で全音の差、半個分で半音の差を表しているっぽいですが、基準がないので何となくの音程の変化しか読み取れません。
さらに、図形の長さを目視で計らないといけないので、正確な音の長さが分かりづらいです。
五線譜に比べてデメリットが多いのに、なぜこのようなサビカラ譜にするのでしょうか?
考えてみると、サビカラ譜を見ながら演奏するわけではないので、別に正確にメロディーが書き表されてなくてもいいですよね・・。
むしろ、何となく分かるくらいシンプルな表記の方が、視聴者としては見やすいです。
図形を使って表しているのは、五線譜の読み方を知らない人や、まだ習っていない小さな子供でも分かるようにという配慮もありそうです。
見た目以外の理由としては、権利関係の問題もあるかもしれません。
まあ、テレビで曲を流す時の、許可取りやお金の流れは良く知らないのですが・・。
でも曲の歌メロだけとはいえ、全国ネットのテレビで楽譜を公開してしまうのは、確実にまずい気がしますね。
その曲のバンドスコアやピアノ譜を販売している側からすると、たまったもんじゃないですし。。
作詞・作曲・歌唱印税なんかとはまた別の問題が発生してきそうです。
そういったことを加味して選択されたのが、サビカラ譜なのかもしれません!
そういえば、先ほどの番組のスクリーンショットを良く見ると、右上の方に「カラオケ音源協力 DAM」と表示されています。
伴奏の音源を流すこと自体は、裏でしっかりと段取りがされていることが分かりますね。
達人譜
今度はゲーム、いわゆる音ゲーと呼ばれるものの楽譜です。
ゲームセンターに行くと、結構色々な種類の音ゲーがありますが、今回は有名どころの「太鼓の達人」を見てみたいと思います。
こんな感じで、キャラクターの顔が右から左へ流れてくるような楽譜になっています(ここでは仮に達人譜と呼びます)。
キャラの顔が太鼓の所に来たタイミングで、バチで叩くと高得点になるという感じです。
「ドン」は太鼓の面の部分を、「カ」は太鼓の縁の部分を叩くという違いもあります。
実際にゲームをプレイしてみると分かるのですが、この達人譜は結構読みにくいです。
一応、音楽をやっている身として自信満々に挑戦するのですが、あえなく返り討ちにあうことも多いです・・。
五線譜のたま(符頭)だけが動いてくるような感触で、次に叩くまでの間隔をキャラの顔の距離で計らないといけないのが、難しいのかもしれません。
達人譜でなく五線譜で良いのでは・・と一瞬思いますが、これもサビカラ譜と同様、五線譜でない方が良さそうです。
そもそも太鼓の達人は音程に相当するのが「ドン」と「カ」の2種類しかありません。
「五線」使う意味がありませんね・・。
それに、達人譜のキャラの顔が流れてくる動きは、五線譜のオタマジャクシよりも確実にワクワクします。
上手く叩けた時や連打する時の派手な演出も、ゲームの爽快感に繋がってそうです。
他の理由としては、五線譜への拒否感もあるのかなと思いました。
読み書きを音楽の授業やピアノの先生に習ったものの苦手で、ちょっとしたトラウマになっている人も多いのではないでしょうか(私もです)。
それを、楽しむことが目的のゲームに持って来られても・・って感じですね。
ゲーム性がなくなって、単純に楽譜を読む作業になってしまいますし。。
もし太鼓の達人に五線譜が採用されていたら、読譜が得意なクラシックピアノ出身者が無双していたかもしれません!
そういえば昔、ダンレボ(ダンスダンスレボリューション)というゲームがありました。
あまり詳しくないのですが、これが音ゲーの元祖的存在だったと記憶しています。
曲に合わせて足元のコントローラー(家庭用ではマットみたいなやつでした)を操作するのですが、スクリーンショットのように、下から上に流れてくる矢印に合わせてステップを踏む感じです。
このダンレボのシステムは、出た当初は衝撃的でした!
楽しさと分かりやすさが両立した、画期的な楽譜だと思います。
もはやダンスを五線譜で表そうなんてことは、微塵も思いません。。
太鼓の達人などの後発の音ゲーも、このダンレボに影響を受けているのかもしれませんね。
ピアノ系YouTube譜
最後に、最近良く目にするピアノ系YouTuberの楽譜を見てみます。
こんな感じで、上から音の高さと長さに対応した図形が降りてきて、鍵盤の所まで来ると光るやつです。
図形は緑色が右手で、青色が左手で弾く音でしょうか。
白鍵に対して、黒鍵は少し幅が狭いという違いもあるみたいです。
個人的にはかなり見にくく、じっくり五線譜を読んだ方が結果的に早そうに思うのですが・・いかがでしょうか?
ただ、楽譜が読めない人でも直観的に真似できるというメリットはありそうですね。
楽器屋さんの店頭にも同じように鍵盤が光るようなキーボードが置いてあり、子供達が夢中で弾いているのを良く見ます。
後思ったのは、このピアノ系YouTube譜は動画映えするということです。
視覚的に音数や音域が分かりますし、何より動きがあるので見てるだけなら何となく楽しめます。
YouTubeの動画評価のアルゴリズム的に、画面の中で動きがある方が良い評価になる(おすすめなどに出てきやすくなる)という話を聞いたことがあります。
五線譜に比べると確実に派手に動くので、少々見づらくても採用されているのではないでしょうか。
折衷案?で、五線譜をしっかり出しつつ、ピアノ系YouTube譜も並べて表示している動画も多いですね。
まさにYouTube時代の楽譜といった感じがします。
以上、テレビや音ゲー等で、なぜ五線譜を使わないかを考えてきました。
今回ご紹介した楽譜は、どれも楽器のプレイヤーからしたら作るのも読むのも大変なものばかりです。
しかし、それぞれの目的をクリアするために最適化された楽譜とも言えそうです。
ギターのタブ譜も賛否がありますが、異弦同音があるギターでポジションを指定できる優れた楽譜ですね。
とにかく五線譜を使わないと!という考え方は、少し古いのかもしれません・・。
五線譜が共通言語として通じやすく、汎用性も高いですが、状況に応じて作られた五線譜以外の楽譜の大事さも、今回のブログを書いていて感じました。
皆さんも五線譜以外の楽譜を見つけたら、なぜそれが使われているのかを考えると、ちょっと得した気分になれるかもしれません・・。
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