最近、若い人達の間で90年代のファッションがリバイバルしているらしいですね。ファッションのことは良く分かりませんが、その頃にギターを始めた自分にとっては、練習環境が今とはまったく違っていたことが思い出されます・・。
ということで、今回はこのブログを書いている時点からおよそ30年前、1990年代のギターの練習環境をまとめてみたいと思います。
「当時は良かった・・」とか、「今の練習環境は恵まれてる・・」とか、懐古主義に走るつもりはないので、気楽に見て頂ければと思います。
ちなみに、90年代よりさらに前の世代(1960年代頃?)の練習環境については、レコードを擦り切れるまで聴いて耳コピしたとか、ビデオ(ギタリストの動く映像)がなかったので写真から色々と想像を膨らませたとかいう話をちらほら聞きました。
果たして90年代はどんな感じだったのでしょうか?
なお、今回は田舎出身で情報弱者だった筆者の体験をもとにしています。
当時も最新機材を使えば驚くようなことができたと思いますが、それは知る由もありません・・。
リアルないちギタリストのケースだと思いながら読んで頂けると幸いです。
チューニングが大変
ギターを練習する前にはチューニングをしますが、まずこれが大変でした。
というのも、現在当たり前に使われているクリップチューナーはなく、音叉を使っていたためです。
まずAの音が出る音叉を膝で叩いて、ギターのボディに触れさせて音を増幅させます。
その音に5弦のAの音を合わせた後、他の弦を順番に合わせていくという感じです。
弦が新しかったり温度の変化があったりすると基準の5弦もまた狂ってくるので、その時は再度音叉を鳴らす所から再スタートすることになります・・。
音叉を使う方法は、時間がかかる以外にも様々な大変さがありました。
雑音があると合わせにくいですし、自分の耳を基準にするので、チューニングができたとしても人によってその精度に差が出てきたりします。
当時は私も音痴なギターだったかもしれませんが、チューニングの精確さでそのギタリストの力量が分かる一面もありました。
気付かずに音を高くしすぎて、チューニングしてるだけなのに弦を切るような人もいましたね・・。
音叉の他には、ピッチパイプというギターの開放弦の音が出せる笛のようなアクセサリーがありました。
これだと6本の弦それぞれの音程を鳴らしてチューニングできるのですが、私は笛の音とギターの音を合わせるのが苦手であまり使っていませんでした。
いわゆる電気的に音程を判別してくれるチューナーも存在はしていて、おそらくエレキギターをメインで弾く人は持っていたんだと思います。
アコギの場合は(エレアコも普及していないので)マイクで音を拾うチューナーがありましたが、筆箱くらいのサイズ感で値段もまあまあしたように思います。
そもそも、チューナーを売っているお店に行くのも大変だという問題もあり、使うようになるのはもう少し先のことになります。
メトロノーム専用機
現在はスマホのアプリやDAWのソフトの中に当たり前のようにあるメトロノームですが、当時はその機能に特化した製品を買う必要がありました。
クラシックピアノの練習に使うような機械式のメトロノーム(振り子でカチカチ鳴るやつ)はもちろんありましたが、ポケベル(これも時代を感じる)くらいのサイズの電池式のメトロノームが出始めたころだと思います。
いくつかのリズムパターンが選べるのと、クリックの音量が変えられるくらいのまさにメトロノーム専用機でした。
そういえばオマケ的にAの音を鳴らす機能が付いており、これを基準にチューニングする人もいましたね。
機材は足で調達
ギター本体はもちろん、弦やシールド、ピックなどのアクセサリーもすべて、店舗に足を運んで手に入れる必要がありました。
近くに楽器屋さんがあればいいんですが、都会以外にはなかなか無いものです。
私の場合は電車で片道1時間かかりましたが、それでもまだ恵まれている方かもしれません。
今はもう何でもネットでポチれば届けてくれますね。
手間が掛からないのもありますが、何よりお店にない幅広い商品(ロングテール)が手に入ることが、ネットショッピングの大きな魅力だと思います。
金額の大きなものは実物を確認してから購入したい所ですが、例えばエフェクターならレビューの動画がたくさんあるので、自分で試すよりも冷静に判断できたりしますね。
教則本が先生
クラシックギター以外の分野については、60年代なら「レコードが先生」みたいなこともあったかもしれませんが、90年代はそれなりにギターの教則本や教則ビデオが出ていました。
一方、ギター教室は今ほど多くなく、当然オンラインレッスンも存在しないので、多くのギタリストは日々教則本と格闘していたと思います。
私は幸いにも教則ビデオ(結構高価で新品のゲームソフトくらいする)を買ってもらえたので、それを見ながら練習することもありました。
ビデオの映像だと教則本の写真では分からない「動き」が確認できます。
教則ビデオのインストラクターがプレイする地味な練習曲も、夢中になって見ていました。
あまりに教則ビデオが楽しすぎて、今取り組んでいる曲がある程度弾けるようになるまでは、次の曲のデモ演奏は見ない、と自分ルールを作ったほどです。
後々、短期間だけですが近く(といっても片道1時間以上)のギター教室に通うのですが、その時の衝撃(先生の演奏の凄さやアドバイスの的確さ)は、映像を遥かに超えるものになるんですが・・。
今は無料のレッスン動画がたくさん出ているので、わざわざお金を出して教則本を買ったり、レッスンに通うことをためらう人もいるかもしれません。
しかし、教則本は「本」としてまとめられているので、それ1冊で体系的に学ぶことができるようになっている利点があります。
レッスンは、映像よりもさらにインパクトがある「生」のプレイと声が聞けます。
少しでも気になったら、ぜひトライしてみて下さい。
名盤探しの旅
昔からギター雑誌や教則本には、魅力的なギター名盤がたくさん紹介されています。
今ならサブスクで探して、なかったらCDをポチったり音源データをダウンロードするだけで聴くことができますが、当時は実物の音源を手に入れるしかありませんでした。
しかもアルバム1枚で3000円ほどするので、おいそれと買うわけにはいきません・・。
結果、中古ショップやレンタルCD店を渡り歩く旅に出ることが、休日の過ごし方の1つになっていたりしました。
そうやって手に入れた音源はヘビーローテーションになるので、今でもよく覚えているものが多いです。
一見昔の方が良さそうに思えますが、よほど音源収集に熱心でないと、最新のアルバムや本で紹介されている様々な音源を網羅して聴くことはできません。
なので、例えば友達と同じバンドの話をしても、お互いに聴いているアルバムが違うので話がすれ違うなんてこともよくありました。
それが逆にCDの貸し借りなんかに繋がって、話が膨らむ効果はありましたが・・。
録音はプロしかできない?
録音と言えば、当時は選ばれた特別な人だけができる行為といった感じでした。
もちろん、簡易的な録音ならやってた人も身近にいましたが、ラジカセにマイク(安いピンマイクみたいなの)を繋いでテープに録音するような少し原始的な方法です。
これも使い道がないこともありませんが、音楽を録音するにはなかなか厳しい音質になりますね・・。
機材としてはカセットテープのMTR(マルチトラックレコーダー)が一般にも出回っていた記憶していますが、価格や音質の問題もあり、録音に特に熱心な人だけが使っていたという感じです。
ただ、90年代の後半あたりから、カセットテープではなくSDカード?のようなものに記録するMTRが出始めて、これは私も持っていました。
カセットと比べて音質の劣化は少ないのですが、5分程度の曲で4トラックほど使ったら一杯になるような容量しかなく、練習用途以外ではちょっとしたデモを作るくらいしかできませんでした(もちろん記憶媒体にもよると思いますが、容量が大きいものはかなり高額でした!)。
今ではスマホとギターを繋ぐインターフェースなどもありますし、誰もが気軽に高音質で録音することができますね。
この便利さはもう享受するしかないと思います。
録って録って録りまくりましょう!
さいごに
家電のない時代には戻れないように、ギターに関しても無理に昔の練習環境に戻して実践する必要はないと思います。
手間を掛けて音叉でチューニングするよりも、チューナーでさっさと合わせて練習に時間を費やすほうが有益な気がしますよね・・。
ただ、不意に昔の状態に戻った時にどうするか、その時自分に何ができるかを考えておくことは、役に立ちそうです。
例えば曲を作っている時に、スマホの充電が切れて録音できなくなったとします。
ここで、メロディーが浮かんでも記録できないので作業は終わり!とするのではなく、紙に五線譜やドレミなどの音名を書いてメモする方法もあるはずです。
もしどうやってメモすれば良いかが分からないとしても、自分の出している音を紙に書けないということが実感できるので、後々勉強したり、逆にスマホ電源のバックアップ手段を整えるなどの手が打てます。
過去のこと(歴史)を知って考えたり体験したりしつつ、現代のテクノロジーを最大限有効に利用する、というのが最適解なのかもしれません・・。
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