
ギター歴が長くても、エレキギターとアコースティックギターの両方を持っている人は、意外と少ないのではないでしょうか。もちろんどちらかに特化して取り組んだ方が、その楽器のエキスパートになりやすいと思うのですが、エレキとアコギの両方を弾くからこそのメリットも、色々とあるように感じます。
アコギへ還元されるメリット
まずは、エレキギターを弾くことでアコースティックギターに活かされるメリットを考えてみます。
弾き語りやソロギターなどがメインでアコギしか弾かない人が、エレキを弾くとどんな良いことがあるでしょうか?
最初に思い当たるのが、セッション能力が上がることです。
決められたアレンジをそのまま弾くことが多いアコギに対して、エレキではコード進行の上で自由にソロを弾いたり、リズム隊の演奏に反応するようなバッキングをしたりと、柔軟な対応が求められることが多くあります。
独りよがりの演奏にならないように周りの音をしっかりと聴く必要がありますし、弾き方やフレーズなどの引き出しに多さも重要になってきます。
アコギだけをやっていると、歌の伴奏はめちゃくちゃ上手いのに、単音で簡単なソロを取ることができないようなことも結構あるのではないでしょうか?
エレキギターを弾くことで、アコギではあまり必要でなかった適応能力が鍛えられ、それが同じギターであるアコギにも還元されます。
もちろん弾き方や音色が違う部分はありますが、指板の音の並び方が同じなので、比較的すんなりと応用できると思います。
次に適度に脱力できることも、エレキギターから還元されるメリットです。
エレキでは左手で少し強く押弦するだけで、聴いている人にも分かるくらい音がシャープしてしまいます。
また、右手で強く弾きすぎると、音がつぶれてしまうことがありますし、少し速いフレーズやカッティングに対応できなくなくなります。
アコギだけ弾いていると、どうしてもガシガシと力任せに弾いてしまいがちですが、エレキをやることでその力みを体で実感しながら取り除くことができます。
後は、音作りに対する意識が高くなるメリットもあります。
誤解を恐れずに書くと、アコギはすっぴんで、エレキはお化粧をした状態で、どれだけ綺麗かが求められている風潮があると思います。
特にアコギに関しては生音至上主義的な所があり、生音の良い楽器をきちんと鳴らしていればそれでOKだとなりがちです。
しかし多くの人に聴いてもらう時には、マイクやラインから様々な機材を通って、最終的にスピーカーから音を出すことになります。
一方エレキの方は、例えアンプ直で音を出すにしても、ギター側のピックアップセレクターやトーンコントロール、アンプのツマミのセッティングなどによって音が全然違ってくるため、ギタリストはベストな音を作ろうと苦心します。
練習スタジオに個人練習に行って、この音作りだけで数時間が経過してしまう人も多いのではないでしょうか・・。
しかも、演奏する曲やバンド編成などによって、どんな音が良いかは変わってきます。
まさにTPOに合わせてお化粧をするような感じではないでしょうか?
アコギでも、生音ならマイクの当てる位置や角度を、エレアコなら手元のプリアンプのイコライザーを少し変えるだけで、結構音が変わってきます。
エレキと同じようにエフェクターを使ったりすると、できあがる音の種類はもう無限大になりますね。
エレキを弾くことで、アコギでもお化粧を気にすることができる(もちろんしなくて良い場合もある)というのが、エレキからアコギに還元される3つめのメリットでした。
エレキへ還元されるメリット
それでは先程までとは逆に、アコースティックギターを弾くことでエレキギターに活かされるメリットを考えてみます。
バンドやセッション活動が主体でエレキしか弾かない人が、アコギを弾くとどんな良いことがあるでしょうか?
まず、音楽の様々な要素を把握する能力が高くなると思います。
なぜならアコギは1本だけで曲を演奏することも多いので、必然的に全体を意識せざるを得ないためです。
曲のリズムをどのように刻むのか、ベースの動きをどうするか、どこで盛り上げるのか、どうやって展開させていくのか・・様々なことを自分1人で決めて演奏しないといけません。
エレキの場合は、どちらかというとバンド全体の中でどうすればうまくハマるか?という思考で演奏していると思います。
アコギを弾くことで、個人事業主のように1人で全体を見る(聴く)ようになるため、それをエレキに還元することができます。
もちろんギターの演奏にも良い影響があるでしょうし、バンドで曲をアレンジする時なんかにも役立つと思います。
もっと行くと、エレキ1本だけで音楽的なソロパフォーマンスができたりするかもしれません。
ギターを練習するハードルが低くなることもアコギからエレキに還元されるメリットです。
エレキを弾くには、少なくともシールドを繋いで、アンプの電源を入れて、ボリュームなどを調整して・・といった作業が必要になりますが、アコギは持った瞬間にすぐ弾くことができます。
手に届く所にアコギを置いておけば、例えばテレビを見ていて気になるフレーズが出てきた時に音を取ったり、ふと曲のアイデアが浮かんだ時にギターで形にしたり、ということがすぐできます。
一般的に楽器は、それが弾ける状態にするまでのハードルが結構高いと思うのですが、アコギはかなり低目です。
アコギで下がったハードルは、エレキでもそのまま飛び越えてしまえる可能性が高いと思います。
上級者は、休日にソファーに座って気ままにエレキを弾く・・なんて過ごし方もできるかもしれません。
最後に、押弦やピッキングに意思を持たせられるというメリットです。
エレキでは歪ませて弾くことも多く、あまりうまく弾けないフレーズでも音色でごまかすことができます。
また、ドラムやベースなど他の楽器と一緒に演奏するので、少しやらかしたくらいでは誰にも気付かれないこともあります。
言い方は悪いですが、あまり練習してなくてもそれっぽいことが出来る楽器、と言えるかもしれません。
一方アコギでは、きっちりと押弦して適切にピッキングしないと、まともな音が出ません。
1人で演奏することも多いので、ギターの音におかしな所があれば一発で見抜かれてしまいます。
そんな中で、しっかりと楽器を弾くという意識や、手元で楽器をコントロールするという意識が自然と生まれます。
この自分の力で楽器を弾く意識をエレキに持ってくると、結構怖いものなしかもしれません。
アコギよりもエフェクトの"のり"が良いので、様々な音色プラス手元のコントロールで表現力が凄いことになりそうです。
エレキの方がアコギよりも押えやすかったりして楽に弾けることが多いため、孫悟空が修行用の重い道着を脱いで本気で戦う時のような効果もありそうですね!